「弟子」を10回言ってみよう!
でし、でし、でし、でし、でち・・・・・・・・でっち!
昔、丁稚奉公に出た子どもが里帰りし、また勤めに戻るときに、奉公先の本家へと、お母さんが持たせたのが「でっちようかん」でした。普通のようかんと比べると材料もシンプル、田舎の農家でも手に入る砂糖や小麦粉を使った素朴な優しい味のお菓子です。
それには、可愛い息子や娘の奉公先へ「うちの子をよろしく頼みます」というお母さんの精一杯の想いが込められていたのです。
ここ滋賀県からも京阪神へ丁稚奉公に出ていた歴史があり、湖西・湖北のでっちようかんは郷土のお菓子として有名です。
今日はその「でっちようかん」を作り、昔懐かしい遊びをして、ちょっと一昔前にタイムスリップしてみる、そんなイベントです。
ゆで小豆からこしあんを作り、小麦粉と砂糖を加え、よく混ぜ込みます。
大きな竹皮に包んで。竹のいい香り。
雪の中のかまどで、蒸すこと約40分。
さてさて、このあつあつのようかんを手っ取り早く冷やすには…何といってもこれが一番。
雪の冷蔵庫。
待っている間に、爪楊枝と羽根突きの板とハネ作り。
クロモジの木の枝は、高級菓子の爪楊枝やお箸などに使われます。
危ない危ない、と普段ではなかなか握らせてもらえないナイフですが、今日は、みんな挑戦。
枝をゆっくり削っていきます。なかなか上手に使えていますよ。
クロモジのいい香りが部屋中に漂います。
次は、羽根突きセット作り。
ムクロジの木の実は、その硬さから、昔から羽根突きの玉に使われてきました。
羽は、羽根突き用のものもあるのですが…ここで、オリジナリティー溢れる館長のビックアイデア(非現実さと突拍子もなさがたまに傷(笑)が登場。
今日の目玉は「フクロウの羽」です。
フクロウの羽で出来た羽子板ハネなんて、きっと、他にはありません。
羽子板には、好きな絵を描きます。
桜やうさぎ、似顔絵など、可愛らしい作品ができました。
さて、羽根突きゲームの開始。
本来のルールは、打ち合いをして、落としたら顔に墨でバツをかかれてしまうというもの。
もちろん、今日は墨を用意…!としたいところなのですが、本日参加してくださった子どもさんたちがあまりに可愛いので、スタッフも心を痛め…黒いバツ型シールで代用。これならはがせる!
両側のほっぺと、最後はおでこ。3つバツがたまったら…バツゲームは何にしましょう?!
ムクロジの玉がコンコン当たる音は、快活でなんとも気持ちがいいものです。
ところで、気になるフクロウのハネですが、他のものと落ち方が違い、最初はゆっくりでそのうち加速して、くるくるプロペラのように落ちます。ということで、羽根突きには向いていないようです(笑
が、見た目はアートそのもの!飾りにお使いください。
さて、そろそろようかんが冷えた頃。雪の冷蔵庫から取り出します。
今日は「囲炉裏小屋」で、昔のお家の雰囲気を味わいながら、お茶の時間を楽しみます。
木造の囲炉裏のある昔ながらの住居。薪を囲んでの団欒などは、今ではほとんど見られなくなりました。子どもたちにとっては、初めての空間ですが、不思議とくつろげてしまいます。
さて、囲炉裏が暖まってきて、いよいよ、でっちようかんの試食タイムです。
どきどき!竹の皮をひらいたら、ぷるんとつやのある美味しそうなでっちようかんが!
…という素敵な結末でよろしいですね、小豆の神様。
ここから先は、囲炉裏小屋の優しい団欒のひとときを、森からそっと眺めていたぐりちゃんが、よ~く知っています。
エピローグ
「でも、美味しい!」
人の心の温かさ、それに勝るぬくもりは、ありません。
それは、火のように火種とともに尽きてしまうのではなく、心の中でくすぶり続け、淡い色を放ちながら、決して消えて色褪せるようなことがないのです。
これで どんとはれ
脚注:遠野物語のしめに多用される節で、「めでたしめでたし」の意であるが、「お話はこれで終わりで、現実の世界に戻りますよ」「私の責任ではなく、お話の世界のことですよ」というニュアンスも含まれる。
@shimizu